世界の緊張高まる中、核兵器支出や兵器が膨れ上がる:研究結果

     Nuclear arms spending, arsenals swell as global tensions grow: studies

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【Insider Paper】AFP通信2023年6月12日 6時44分

 https://insiderpaper.com/nuclear-arms-spending-arsenals-swell-as-global-tensions-grow-studies/


地政学的緊張が高まる中、世界の核保有国、特に中国が2022年に3年連続で核兵器への投資を増加させたことが、2つの報告書で明らかになった。

 

 

核兵器廃絶国際キャンペーンICAN)の新しい報告書によると、世界の9つの核保有国は昨年、共同で829億ドルを核兵器に投じ、米国はその半分以上を占めている。

 


一方、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、英国、中国、フランス、インド、イスラエル北朝鮮パキスタン、ロシア、米国が保有する核弾頭の総数が、2022年初頭の12,710から今年初頭には12,512に減少したとするレポートを発表した。

 

 

その中には解体予定の古い核弾頭も含まれているが、SIPRIによれば、「潜在的な使用のための軍事備蓄」は9,576個で、1年前より86個増えている。

 

SIPRIのダン・スミス所長はAFPに対し、「世界の核兵器の数が減少する長い期間の終わりに近づいている、あるいはすでに達しているかもしれない」と述べた。

 

 

■■ 刻々と増え始めている

 


スミス氏は、使用可能な核弾頭の備蓄について、「その数は増え始めている」と指摘する一方で、1980年代に見られた7万発以上の数をはるかに下回っている、と付け加えた。

 

増加の大部分は中国によるもので、中国が保有する核弾頭は350から410に増加した。

 

インド、パキスタン北朝鮮も備蓄量を増やし、ロシアは4,477発から4,489発へと微増にとどまったが、残りの核保有国は備蓄量を維持した。

 

ロシアと米国を合わせると、全核兵器の90%近くを保有している。

 

「全体像としては、30年以上にわたって核弾頭の数が減少してきましたが、そのプロセスは今、終わりを告げようとしています」とスミス氏は述べました。

 

 

■■ 157,664ドル毎分

 


ICANが報告した高額な支出は、それを裏付けているように見えた。

2017年にノーベル平和賞を受賞したICANは、核兵器への支出が2021年から3%増加し、3年連続の年間増加であることを明らかにした。

 

費やされた829億ドルは、2022年の1分間に157,664ドルに相当すると、「無駄遣い:2022年世界の核兵器使用量」と題した報告書の中で述べている。

 

ワシントンの支出額は437億ドルで、前年よりわずかに減少したが、それでも他の国々を大きく引き離していることが報告書で示された。

 

次いで中国が117億ドル、ロシアが96億ドルで、いずれも2021年から約6%の増加を示している。

 

一方、インドは最も大幅な支出増を示し、前年比21.8%増の27億ドル、イギリスは11%増の68億ドルを支出した。

 

また、核兵器製造に携わる軍需企業が昨年160億ドル弱の新規契約を結び、米国とフランスだけで1億1300万ドルのロビー活動を行ったことも報告されている。

 

 

世界的に見て、核保有国は少なくとも2786億ドル相当の核兵器生産契約を企業と結んでおり、場合によっては2040年まで続くという。

 

 

■■ 外交的挫折

 


SIPRIの研究者は、昨年2月のロシアのウクライナ侵攻後、核軍備管理・軍縮に関する外交努力が挫折したと指摘した。

 

例えば、ロシアは冷戦時代の条約である新START(核弾頭を制限し、双方による検証を可能にする条約)への参加を停止している。

 

同時にスミス氏は、新しい核弾頭の開発にはより長い時間がかかり、増加の大部分は直接影響を受けていない国のものであるため、備蓄量の増加はウクライナ戦争で説明できないと述べた。

 

また、中国は経済と影響力の拡大に伴い、軍事のあらゆる部分に多額の投資を行っている。

 

「私たちが見ているのは、中国が世界の大国としてステップアップしている姿です」とスミス氏は言う。