【Breit Bart】ルーカス・ノーラン著 2024年7月18日
エコノミスト誌のレポートによると、サンフランシスコのようなハイテクハブでは人工知能を取り巻く話題が盛り上がっているが、世界のビジネス環境はAIの導入と影響において対照的である。
そこでは、広告がAIの革命的な可能性を宣伝し、何気ない会話が人工的な一般知能(AGI)の出現について推測している。
このような熱意は、グーグル、アマゾン、アップル、メタ、マイクロソフトといったハイテク大手からの多額の投資に裏打ちされている。
もちろん、AIの新興企業であるOpenAIは言うまでもないが、これらの企業はAI関連のハードウェアや研究開発のために、合わせて今年推定4000億ドルの予算を組んでいる。
しかし、AIが世界経済に与えるインパクトの現実は、もっと厳しいものだ。
AIが世界中の企業活動を真に変革するためには、さまざまな分野の企業がこの技術を統合し、それぞれのニーズに適応させ、生産性を高めるために活用する必要がある。
投資家はこの1年で、大手テック企業5社の時価総額に2兆ドル以上を上乗せし、さらに年間3000億~4000億ドルの売上を見込んでいるが、実際の結果はこうした期待を大きく下回っている。
AI開発のリーダーであるマイクロソフトでさえ、今年のジェネレーティブAI関連の売上は100億ドル程度にとどまるだろうと楽観的なアナリストは予測している。
ハイテクが飽和状態にあるアメリカ西海岸以外では、AIが企業経営や経済指標に大きな影響を与えたという証拠はほとんどない。
AIの普及率は大きな課題である。一部のコンサルタント会社やハイテク企業は、ナレッジワーカーや企業におけるAIの利用率が高いと報告しているが、公式統計では異なる様相を呈している。
最も信頼性の高い推定値を提供している米国国勢調査局によると、過去2週間にAIを使用した企業はわずか5%だった。
同様の低い採用率は他の国でも観察され、カナダでは過去1年間にAIを使用して商品を製造したりサービスを提供した企業は6%であったと報告されている。
この導入の遅さにはいくつかの要因がある。データ・セキュリティ、アルゴリズムの偏り、AIの幻覚に対する懸念から、多くの企業が慎重になっている。
技術開発のペースが速いため、投資がすぐに陳腐化することを恐れ、AIプロジェクトへの投資をためらう企業もある。
また、小規模なAIプロジェクトが氾濫することで、最も有望な投資分野を特定することが難しくなる「パイロット炎」に悩む企業もある。
AIを業務に組み込んでいる企業は通常、顧客サービスの合理化やマーケティング活動のパーソナライズなど、狭い範囲のタスクにAIを使用している。
しかし、こうした用途は、企業の業績や市場評価に大きな影響を与えるには至っていない。
ゴールドマン・サックスのAI導入指数は、AI導入による潜在的な収益の変化が最も大きい企業を追跡するものだが、2022年後半以降、より広範な株式市場をアウトパフォームしておらず、投資家がAI統合による追加利益の見通しをほとんど立てていないことを示唆している。
さらに、AIによって生産性が急上昇するという証拠はほとんどない。
豊かな国の中央値では従業員1人当たりの生産高は伸びておらず、米国では時間当たりの生産高は2020年以前のトレンドを下回ったままである。
このような生産性の伸びのなさは、世界の購買担当者調査にも反映されており、生産性ブームの兆しは見られない。