しかし、ゼレンスキーは失望するに違いない。
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナのNATO加盟を侵攻の契機とした。
【PJmedia】2023年7月11日 リック・モラン著
ヴィリニュスで開催されたNATO首脳会議は、発表された瞬間から成功が決まっていた。
しかし、その結果を達成するためにNATO加盟国間で行われた駆け引きは、同盟にとっても個々の加盟国にとっても広範囲に及ぶ影響を及ぼすことになる。
サミットの最も重要な成果は、サイドラインで起こった。
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が、数カ月も遅れていたスウェーデンの加盟反対をついに取り下げたのだ。
エルドアンが最終的に譲歩した理由は、ジョー・バイデンがトルコへのF-16売却を承認したためだ。
まあ、そうでもないのだが。
ホワイトハウスのジェイク・サリバン国家安全保障顧問は、トルコがスウェーデンの同盟加盟に賛成票を投じたからといって、ジェット機の見返りはなかったと厳粛に誓っている。
しかし、もしそれを信じるのであれば、シカゴ川にかかる跳ね橋を1曲で譲ってあげよう。
しかしアンカラは当時、2017年にロシアのS-400防空システムを購入したことで制裁を受けていた。
また、トルコの人権侵害に対する批判もあり、NATO加盟国間の関係は冷え込んでいた。
しかしエルドアンは時間をかけ、多くを譲ることなく軍用機を確保することができた。
スウェーデンのNATO加盟に反対したのは、ストックホルムがクルド人分離主義者のグループをいくつか受け入れていることと関係があった。
これはエルドアンにとって国内政治的な問題であり、彼が立ち向かわなければならなくなるまで、立ち向かおうとはしなかった。
ヴィリニュスで行われたエルドアン大統領との会談に関するホワイトハウスの報告書には、アメリカが再びクルド人をバスの下に投げ捨てたことは書かれていない。
F-16は、トルコがトルコ北部のクルド人居住区を爆撃するときに役に立つだろう。
その上、エルドアン大統領はもともと、トルコのEU加盟とスウェーデンのEU加盟賛成票を交換したかったのだ。
レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が、トルコのEU加盟と引き換えにスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟に対する拒否権を解除する可能性を示唆したのは、最も露骨な恐喝だった。
スウェーデンに関する突破口は開かれたように見えるが、エルドアン大統領のEU加盟提案は、米国と欧州の同盟国にとって、トルコ大統領が多国間組織内で信頼できる同盟国ではないことのさらなる証明と受け止められるべきである。
「まずはEUにトルコの道を開いてくれ。その後、フィンランドにしたように、スウェーデンにも道を開いてやる」と、エルドアンはNATO首脳会議に出発する前にイスタンブールで記者会見した。
この強引な恐喝の試みは、多くの同盟加盟国には受け入れられなかった。
首脳会議に向けて同盟が直面した2つ目の大きな問題は、同盟加盟を望むウクライナに対してどうすべきか、という問題に答えることだった。
ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が全面的に圧力をかけ、少なくともウクライナのNATO加盟に必然的につながるようなスケジュールを打ち出すよう米国、ドイツ、その他のNATO加盟国に圧力をかけたにもかかわらず、同盟はゼレンスキー大統領を拒否した。
同盟が譲歩したのは、正式な加盟行動計画(MAP)の手続き上の必要性を取りやめることで合意したことだ。
しかし、ゼレンスキーは同盟の約束のあいまいさを、和平交渉のための交渉材料と見るのが正しい。
ウクライナはNATO加盟の具体的なスケジュールを要求し、加盟国に加盟実現のための具体的な手順を約束するよう迫っている。
しかし、多くのNATO諸国は、ロシアとの直接戦争のリスクを冒すことに慎重であり、ウクライナの希望と現実的な安全保障上の計算とのバランスをとる方法を模索している。
ゼレンスキーの怒りに満ちた介入は、7月11日(火曜日)の最終合意の前ではあったが、すでに文言が出回り始めた後であり、同盟がまだ双方を満足させる方法を見つけられていないことを示唆していた。
NATOの外交官たちは、7月11日(火曜日)にウクライナの加盟見通しに関する統一宣言を発表し、ゼレンスキーのサミット訪問を前に勝利の瞬間を迎えることを期待していた。
ウクライナが敵対行為の終結後に同盟に加盟することが決まっているのに、なぜロシアがわざわざ和平交渉をしなければならないのかという疑問もある。
ゼレンスキーは、ウクライナが戦闘終結後も常に戦争の脅威にさらされることを知っており、それを防ぐためにNATOの安全保障の傘を望んでいる。
しかし、ゼレンスキーは失望するに違いない。
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナのNATO加盟を侵攻の詭弁とし、どんなことがあってもウクライナのNATO加盟を受け入れそうにない。
ということは、米国にとってはまたもや「永遠の戦争」であり、米国が紛争に巻き込まれる可能性が高まっていることを意味する。