ドイツ国民が原発を支持する意外な展開に

 

【Zero Hedge】BY:タイラー・ダーデン 2023年1月27日 - 03:45 pm

https://www.zerohedge.com/political/unexpected-swing-germanys-public-now-favors-nuclear-power

アレックス・キマニ氏(OilPrice.com)より許諾を得る

 

欧州のエネルギー危機を受け、ドイツでは原子力発電に対する世論が変化している。

ドイツの緑の党社会民主党は、以前から原子力からの脱却を支持してきた。

原子力は、石炭を燃やすことに逆戻りするよりも望ましいエネルギー源と見なされているのである。

 

ドイツは何十年もの間、原子力発電と愛憎半ばする関係を維持してきた。

現在、ドイツには3基の原子炉があり、国内電力供給の6%程度を生産している。

 

1990年代、19基の原子力発電所が国内電力供給の約3分の1を生産していた時代とは大違いである。

 

このような状況になったのは、1998年、緑の党社会民主党からなる中道左派の新政権が、緑の党の長年の目標であった脱原発を要求し始めたことがきっかけであったと言われている。

 

グリーンズは1980年代、冷戦を背景に原子力核兵器の危険性を訴え、頭角を現した。

実際、ドイツで最後に新設された原子力発電所は2002年まで遡り、その後、数十年の間に既存のすべての原子力発電所を段階的に廃止する計画が立てられていた。

 

しかし、2010年にリベラルな自由民主党と保守的なキリスト教民主党の連立政権が誕生し、ドイツにおける原子力の利用が最長で14年延長されると、流れが再び変わった。

 

しかし、その1年後、日本の福島原子力発電所で爆発とメルトダウンが起こり、国民の原子力に対するムードは一変し、ドイツは原子力政策に再び舵を切ることを余儀なくされた。

 

その後、2022年末までに脱原発を目指すという当初の計画に戻した。

 

しかし、ロシアのウクライナ戦争は、ドイツだけでなく大陸全体がエネルギー安全保障の見直しを迫られている。

 

昨年まで、ドイツとロシアは主要なエネルギーパートナーであり、後者が石油と天然ガスの大部分を供給していた。

 

しかし、ロシアの戦争によって、ヨーロッパとドイツは冬が近づくにつれ、代替供給源の確保に躍起になっている。

 

ドイツは今、脱原発戦略を再考しており、国民もそれに同調している。

 

「今後、より多くの電力が必要になる。それが事実だ。そして、(それに代わる)新しいものが何もないときに、6%というのは大きな損失となり得るのです。本当に必要なときに6%を失うことになる」と、ドイツのオラフ・ショルツ首相はジャーマンウェーブに語っている。

 

以前は、福島原発事故の後、国民の大多数が脱原発に賛成していたが、今では80%以上がドイツの既存の原子炉の寿命延長に賛成している。

 

原子力は、石炭を燃やすことに逆戻りするよりは望ましいエネルギー源と考えられているのだ。

 

オランダの反原発団体WISEによると、原発は1キロワット時あたり117グラムのCO2を排出し、1キロワット時あたり1000グラム以上のCO2を排出する褐炭の燃焼と比べるとはるかに少ないとのことだ。

 

 

■■ 石炭に戻る


しかし、エネルギー不足のヨーロッパにとって、温室効果ガスの排出を抑えることは最優先事項ではない。

 

オブザーバー・リサーチ・ファウンデーションのレポートによると、ロシアのウクライナ戦争によって引き起こされたエネルギー供給の混乱は、LNG価格をさらに上昇させ、西欧や北米の厳しい市場も含め、ヨーロッパの大部分では、石炭が配電可能で安価な電力の唯一の選択肢となり、石炭を廃止する政策を明確に打ち出しているという。

 

ワシントンポスト紙によると、ドイツでは10年前に閉鎖された炭鉱や発電所の修復が始まっている。

 

業界関係者はドイツの石炭火力発電所の「春」と呼んでいるが、冬までに少なくとも月10万トンの石炭を燃やすと予想されている。

 

2038年までにすべての石炭火力発電を廃止するというドイツの目標を考えると、これは大きなUターンである。

 

オーストリアポーランド、オランダ、ギリシャなど他のヨーロッパ諸国でも、石炭発電所の再稼働が始まっている。

 

一方、中国の石炭輸入量は、夏のピーク電力需要に対応するために発電事業者が購入量を増やしたため、急増している。

 

稼働中の石炭火力発電所の数は、中国が3,037基と最も多く、EU最大の経済大国であるドイツは63基である。

 

このため、世界の石炭消費量はここ10年来の水準に達する可能性があるが、新規の石炭火力発電所への投資が滞っていることを考えると、その増加には限界がある。

 

しかし、そうなると石炭市場は逼迫し、このエネルギー源はアウトパフォームのカテゴリーに入ることになる。

 

発電用石炭である一般炭は、2021年末から170%上昇し、その大半はロシアのウクライナ侵攻に伴うものである。