【Natural News】2023年1月26 木曜日 BY:アルセニオ・トレド
生体工学分野の新興企業が、動物の臓器を人間に移植する実験を食品医薬品局(FDA)に承認させようとしている。
2022年1月、メリーランド州の末期心不全の男性、デビッド・ベネット氏(57歳)が豚の心臓を受け取るという、世界初の異種移植が行われた。
ベネットさんは病弱で従来の人間への移植は不可能だったため、バイオテクノロジー企業のユナイテッド・セラピューティクス社が豚の心臓を遺伝子操作して、免疫拒絶反応のリスクを低減させたのだ。
そして、この心臓を彼に移植したのである。
しかし、ベネットは手術後2カ月で死亡した。
正式な死因はまだ確定していないが、医学界の主流は臓器拒絶反応によるものではないと主張している。
ユナイテッド・セラピューティクス社は、ベネット氏の死にもめげず、早ければ2024年にも、生きた人間を対象にした豚の臓器の正式な臨床試験を開始することができると考えている。
ユナイテッド・セラピューティクス社のようなバイオテクノロジー企業に雇用されている科学者たちは、バイオエンジニアリングによる代替臓器の作成を研究することが、国内の臓器移植不足を緩和する鍵になると考えている。
ミネソタ州ミネアポリスに本社を置く米・ミロマトリックス社も、豚の臓器を人間の臓器に似せたものに変える実験を行っている企業だ。
ミロマトリックス社のジェフ・ロスCEOは、バイオエンジニアリングされた臓器の世界初の人体実験を年内に行ないたいと考えている。
FDAの同意が得られればの話だが。
FDAがこの実験に同意した場合、最初の実験はボランティア患者の体外で行なわれることになる。
最初の実験では、バイオエンジニアリングされたブタの肝臓が人に使えるかどうかが試される。
このブタの肝臓を改造するために、ミロマトリックス社の科学者は肝臓の「足場」のようなものを作る。
そのために、肝臓の豚の細胞を溶かして流し、臓器をゴムのような質感の半透明の足場に変える。
この足場に、移植できない臓器から採取したヒトの肝細胞を注入するのです。
この生きた細胞が足場の隅々にまで吸収され、臓器の機能を再開させるのです。
「我々は本質的に臓器を再生するのです」とロスは言った。
「その豚の臓器からすべての細胞を取り除くので、我々の体はもうそれを豚の臓器とは見なさないでしょう」。
■■ ミロマトリックス社のCEOが異種移植の潜在的な危険性を警告する
米国では現在、10万5000人以上が臓器移植の待機者となっている。
このうち数千人は順番が回ってくる前に亡くなり、さらに数千人はリストに載ることすらなく、回復の見込みがなさすぎて臓器という貴重な資源を体内に入れることができないと考えられている。
このため、科学者も医師も、臓器のもう一つの供給源として動物に注目しており、FDA自身も、豚の遺伝子編集臓器を使った異種移植の実験をもっと認めるかどうか強く検討中である。
ピッツバーグ大学医療センターの移植外科医であるアミット・テバー博士は、「われわれが持っている臓器の数では、決して需要を満たすことはできない」と言う。
「これが我々の不満なのです」。
バイオエンジニアリングされた臓器があれば、医師は臓器提供のサインをした人が亡くなるのを待つ必要はないのである。
特別な豚を飼う必要もない。
屠殺場から残った臓器を入手し、ミロマトリックス社の科学者たちが現在実験しているような研究手順を踏めばいいだけだ。
「これは長期的には人間に使える臓器の開発に貢献する可能性が高いものです」とテバーは主張する。
しかし、ミロマトリックス社のロス社長は、その危険性について注意を喚起している。
ブタの細胞を剥がすことで異種移植のリスクはある程度取り除かれるが、動物のウイルスが潜んでいたり、過剰拒絶反応などの合併症のリスクが0%になるわけではない。
さらに、バイオエンジニアリングされたブタの臓器にヒトの細胞を取り込ませる作業は複雑である。
「何十億という細胞を一度に臓器に押し込むことはできないのです」とロス氏は言う。