日銀の黒田総裁
【Zero Hedge】by: タイラー・ダーデン 2022年12月20日
https://www.zerohedge.com/markets/boj-sparks-market-chaos-huge-yield-curve-control-adjustment
政策金利を据え置いた後、世界で最も「易しい」銀行は、いわゆるイールドカーブ・コントロールの枠組みを劇的に修正し、毎月購入する国債の量を増やすことにした(他の国々はその反対を行っているのにだ)。
YCCの調整は、債券市場(現在ではほとんど債券が手に渡らない)の機能改善を促す仕組みとして報じられている。
日銀は、この変更を行った理由を次のように述べている。
債券市場の機能は、特に満期の異なる債券の金利間の相対関係や、現物市場と先物市場の裁定関係において悪化しており...」という。
こうした市場環境が続くようであれば、金融情勢に悪影響を及ぼす可能性がある、とした。
日銀はまた、1月から3月までの債券購入額を毎月9兆円に増やした。
日銀が保有する日本国債の割合が初めて時価ベースで50%を超えたことが、12月19日(月曜日)の新しいデータで明らかになったことを心に留めておいてほしい。
予想通り、現物の日本国債はこのニュースに動じなかった。
興味深いことに、日本国債の買い入れ増額が意味する「緩和」にもかかわらず、日本円はドルに対して強くなった(10年債利回りのバンドが広く/高くなるため、理論的には日銀は限度額内に収めるために、より少ない数の国債を購入しなければならないからだ)。
日本円は現在、8月以来の円高水準にある。
もちろん、次の恐慌が起こるまでは。
つまり、日銀は10年物国債が0.25%から0.50%に上昇することを認めるが、できるだけ痛みを伴わないようにするために、国債購入額を月7兆3000億円から9兆円に増加させるということである。
これによって、日本国債のイールドカーブのYCCのねじれは基本的に解消される。
そして案の定、10年物国債利回りは瞬時に爆発的に上昇し、2015年以来の高水準となった。
大阪取引所ではJGB先物の取引が停止された。
日本の銀行株は、NIMsの見通しが良くなったことで急騰している。
キャピタル・エコノミクスは、トレーダーが黒田総裁が行ったWTFを理解するために、いくつかの説明を提供する。
今回の決定が、金融政策の全面的な引き締めにつながることを示唆するような声明文はなかった。
ひとつには、現在の経済状況や今後数四半期の見通しに関する日本銀行の評価は、10月の会合とほとんど変わらなかったことである。
むしろ、外需に対する見方が引き下げられたことで、景気回復の力強さへの懸念が強まっていることがうかがえる。
最も重要なのは、短期・長期の政策金利が現状かそれ以下の水準にとどまるとの見通しをあらためて示したことである。
みずほ銀行のチーフマーケットエコノミスト、唐鎌大輔氏は、このような初動の動きを何か示唆するものと受け取るのは危険だと警告する。
「FX市場は日銀が軸足を置いたと受け取りたいようだが、私はそうは思わない」。
ナショナルオーストラリア銀行によると、日銀のイールドカーブ・コントロールの枠組みの劇的な調整は、政策担当者の円高志向を反映している可能性があるという。
「バンド幅の拡大は市場の機能性を向上させるための動きとされているが、暗黙のうちに日銀が円高を好んでいる(あるいは少なくともさらなる円安を嫌っている)とも言える」と、同行のシドニー在住のストラテジスト、ロドリゴ・カトリル氏は言う。
「YCCの発表は、適切なインフレを待つという日銀の意欲には限界があるという見方を、額面通りに補強するものだ。
日銀のこの行動は、米国債の利回りが急騰し、他の市場に混乱を引き起こした。
ブルームバーグの増島由紀夫氏は言う。
「日銀は(中国を除く)世界の金融引き締めシフトの最後の主役であり、ベンチマーク利回りを以前より高く取引させており、その衝撃は世界の金融市場に響き渡るだろう」。
ビットコインは急騰した(日銀のQEの上昇でだろう。実際には日銀が金利上昇を「許容」することで相殺され、引き締まる)。
黒田総裁は繰り返し、より強い賃金上昇が起こるまで刺激策の必要性を強調し、日銀が円安に対して行動を起こす可能性を排除することで、断固としてハト派スタンスを堅持していた。
黒田総裁はまた、利回り目標値をめぐる動き幅を広げることは利上げに等しいとし、多くのエコノミストがそうした動きはまだしばらく先だと考えているような説明をしていた。
あるいは、それが黒田総裁の狡猾な計画だったのかもしれない。
何のヒントも与えず、1年で最も流動性の低い週の、最も流動性の高い時間帯にそれを行うことで、バンドエイドをはがすように、すぐに効果を発揮する。
おそらく日銀の賢い連中は、利回りが急上昇してもトレーダーは喜んで50bpsで静止させると考えているのだろう。
もちろん、そんなことは起こらない。
黒田総裁の後任は、50bpsの利回り上限を維持するために、ますます大量の日本国債を購入することを余儀なくされるであろう。