肥料の排出を削減する技術のブレークスルー

   

【ZERO HEDGE】BY:タイラー・ダーデン 2022年11月15日 

https://www.zerohedge.com/energy/tech-breakthrough-could-slash-fertilizer-emissions
BY: OilPrice.comのブライアン・ウェスティンハウス


東京工業大学の研究者は、水分の存在下でも安定な窒化ランタン担体上に活性金属(Ni)を含む窒化金属触媒を開発した。

 

目的は、窒素と水素をアンモニアに変換するハーバーボッシュ・プロセスに必要なエネルギーを削減することである。

 

さらに、この触媒はルテニウムを含まないため、アンモニア製造における二酸化炭素排出量を削減するための安価な選択肢となる。

 

この研究報告は、『Angewandte Chemie』(応用化学)に掲載された。

ハーバーボッシュプロセスは、一般的に、水素(H2)と窒素(N2)を触媒上で高温高圧で結合させて合成窒素肥料の基礎となるアンモニア(NH3)を合成するもので、作物の収量を改善し、世界的に食糧生産を増加させた最も重要な科学の発見の1つである。

 

しかし、このプロセスには高温高圧が必要なため、化石燃料のエネルギーを大量に投入しなければならない。

 

このプロセスに使用される水素は、天然ガス(主にメタン)を原料として製造される。

この水素製造プロセスは、エネルギー消費量が多く、二酸化炭素の排出量も多い。

 

そこで、再生可能エネルギーである水の電気分解で製造した水素を用いて、より温和な条件で反応を進行させるために、さまざまな触媒が開発されている。

 

その中でも、ニッケルやコバルトなどの活性金属ナノ粒子(Ni、Co)を窒化ランタン(LaN)担体に担持した窒化物系触媒が注目されている。

 

これらの触媒では、担体と活性金属の両方がNH3の生成に関与している。

活性金属がH2を分解し、LaN担体はその結晶構造中に窒素空孔と窒素原子を含み、窒素(N2)を吸着して活性化する。

 

この触媒は安価であるが(コストのかかるルテニウムを使わないため)、水分があると触媒性能が低下し、LaN担体が水酸化ランタン(La(OH)3)に変化してしまうのである。

 

今回、東京工業大学の細野秀雄教授を中心とする日中の研究者が、水分の存在下でも化学的に安定な触媒を開発した。

 

希土類金属(今回はLa)と金属の化学結合を含む安定な希土類化合物からヒントを得て、LaN構造にアルミニウム原子を組み込み、ランタン原子が水分と反応するのを防ぐLa-Al結合を持つ化学的に安定なLa3AlN担体を合成した。

 

細野教授は、La-Al-N担体にニッケルやコバルトなどの活性金属を担持させると、従来の窒化金属触媒と同程度の速度でNH3を生成でき、水分を含む窒素ガスを供給しても安定した生成量を維持できると説明した。

 

細野教授は、「NiまたはCoを担持したLa-Al-N触媒は、3.5%の水分にさらされても明確な劣化は見られませんでした」と述べている。

 

Al原子が担体を安定化させる一方で、ドープされた担体に存在する格子状窒素と窒素欠陥が、従来の活性金属/希土類金属窒化物触媒と同様の方法でアンモニアの合成を可能にしたのだ。

 

「La-Al-Nの格子状窒素と窒素空孔がN2吸着に重要な役割を果たし、La-Al-N担体と活性金属NiがそれぞれN2とH2の吸収と活性化を担っています」と細野教授は補足する。

 

ハーバーボッシュ法は、エネルギーを大量に消費する化学反応であり、全世界の年間二酸化炭素排出量の約1%を占めている。

 

NH3製造のための環境に優しい代替法が研究されている一方で、安価な触媒を導入することで、より穏やかな条件でプロセスを運転できるようになるため、すぐに効果が得られると考えられる。

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ハーバー・ボッシュ・プロセスは、植物の成長に伴い、生産される以上のCO2を閉じ込めてしまうかもしれない。

 

それから、アンモニアビジネスは最近、非常に儲かっている。この10年間で、肥料用のアンモニアは約10倍の価格になった。

 

このように、この技術が商業的にスケールアップし、肥料王の魔の手に落ちないことを、ほとんどすべての人が願っているのだ。

 

どちらの技術が勝つのか、興味深いところである。

 

水を分解するのもエネルギーフリーではないが、天然ガスのメタンから水素を分解するのもエネルギーフリーではない。

 

この技術がなくならない限り、私たちはついにそれを知ることになるかもしれない。