スタグフレーションのリスクが高まり、景気後退は「回避困難」と世界銀行が警告

Stagflation Risk Growing, Recession ‘Hard to Avoid,’ World Bank Warns

2022年5月12日、ロンドンで青果市場の屋台で作業する商人。(Justin Tallis/AFP via Getty Images)


【NTD/BUSINESSTOM Ozimek】 2022年6月7日号
https://www.ntd.com/stagflation-risk-growing-recession-hard-to-avoid-world-bank-warns_790584.html

 

 

世界銀行は新しい報告書で、2022年の経済成長率予測を1%以上下方修正し、世界経済はスタグフレーション(高インフレと成長鈍化という有害な組み合わせ)のリスクが高まっており、多くの国が景気後退で窒息しかねないと警告した。

 

 

世界銀行は6月7日に発表した見通しで、今年の世界経済は2.9%拡大し、1月に発表した2022年の4.1%のペースから1.2ポイント下がると予測している。

 

 

ウクライナ戦争、中国の閉鎖、サプライチェーンの混乱、スタグフレーションのリスクなどが成長を圧迫している。世界銀行総裁のデビッド・マルパスは声明で、最悪の事態を避けるために、生産を奨励し、貿易制限を課さないことが「急務」であると述べた。

 

ウクライナ

 

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2022年5月28日、ウクライナドネツク州のマリンカという町で、ロシア軍の攻撃で損傷した建物から周辺を点検するウクライナ軍人がいる。(Anna Kudriavtseva/Reuters)


他より大きな逆風に直面する地域もある。アメリカの2022年の経済成長見通しは、1月時点の見通しから1.2ポイント引き下げられ、2.5%となった。

 


一方、欧州・中央アジアは、ロシア・ウクライナ紛争の影響もあり、5.9ポイントも引き下げられ、全体で2.9%の経済縮小が見込まれている。

 


ウクライナ戦争は一次産品価格の高騰を招き、供給の途絶を助長し、食糧不安と貧困を増大させ、インフレを悪化させ、金融情勢の逼迫を助長し、金融の脆弱性を拡大させ、政策の不確実性を高めている」と世界銀行は世界経済見通し2022レポート(PDF)の要旨で述べている。

 

 

世界銀行は、サウジアラビアの2022年の成長率予測を2.1%ポイント引き上げ、7.0%としている。


しかし、新興市場および発展途上国全体では、ウクライナ戦争による負の波及効果が、エネルギー価格の上昇による一部の商品輸出国への短期的な押し上げ効果を相殺するため、世界銀行は2022年の成長見通しを3.4%に引き下げた。

 

 

アンカラの労働者

 

Ankara worker
2022年6月3日、トルコのアンカラにある食品市場で、販売用の果物を並べる労働者。(Burhan Ozbilici/AP Photo)

 

世界銀行が「不安定な」世界経済の回復と表現したものは、物価の高騰をはじめとする多くのリスクによってさらに脅かされている。

 

「特に、1970年代のスタグフレーションを彷彿とさせるような、低成長を伴う頑強な高インフレの可能性がある」と、世界銀行は警告している。


米国では40年来の高水準にある高騰したインフレを抑制するため、世界中の中央銀行が利上げに踏み切っている。

 

先進国で急激な金融引き締めが行われると、借入コストが大幅に上昇し、一部の新興国や途上国で金融ストレスが生じる可能性があると、世界銀行は述べている。

 

今回の経済見通しは、現在の世界経済の状況が1970年代のスタグフレーションと比較してどうなのか、世界銀行が初めて体系的に評価したものでもある。世界銀行は、現在の状況は50年前のスタグフレーションと3つの点で類似していると述べている。

 

「インフレを煽る持続的な供給サイドの擾乱、主要先進国における高度に緩和的な金融政策の長期化が先行、成長が弱まる見込み、インフレ抑制のために必要となる金融政策の引き締めに関して新興市場や途上国経済が直面する脆弱性」だと、世界銀行は述べている。

 

1970年代との違いは、ドル高、商品価格の上昇幅の小ささ、主要金融機関のバランスシートの強化などである。


世界銀行は、来年は世界のインフレ率が軟化すると予想しているが、多くの国で目標インフレ率を上回ったままとなる可能性が高い。

 

「インフレが高止まりしたままであれば、先のスタグフレーションの解消が繰り返され、一部の新興市場や途上国での金融危機とともに、急激な世界的景気後退につながる恐れがある」と世界銀行は警告している。

 

世界銀行はまた、2023年の世界成長率見通しを0.2%ポイント引き下げ、3%とした。

 

同様に、2023 年の米国経済の成長率見通しも 0.2 ポイント引き下げた。 2.4%のペースで経済が拡大すると予想されるようになった。