悲劇再び

午後、またマグマ大使一族(近隣の家)の母ヤギが犬に襲われて、何か所も噛まれてしまった。
私は家の中にいたが、外から聞こえる犬の集団の声に気付いて何かすごいヤバイ予感がした。慌てて駆けつけて行ったとき、ちょうど数匹がその母ヤギに噛みついていた。犬たちを追っ払って、取り急ぎは犬の追跡よりヤギの救急手当のほうが急務なのですぐ傷口を洗って、同時に飼い主宅へ知らせに行った。

腹部や首、角など10か所ぐらい噛まれており、足は幸い無事で歩いて帰ることができた。私はいったん帰って、大急ぎでまた例の傷がすぐふさがる薬草の汁を大量に作って、飼い主宅へ持って行って塗ってあげた。明日のぶんも渡しておいた。飼い主もせっけんで水洗いして何か薬を塗ったというので、ひとまず良かった。

噛まれた母ヤギは私たちが引っ越してきた時からすでにおり、もう4歳以上か結構年は取っていると思われるが、今妊娠中だそうで、何とか助かってほしい。本当に痛々しく、可哀そうだ。噛まれていた時もヤギは何もできず絶叫して、歯を食いしばって目をむいているだけなのだ。草食動物なのでショックも大きいと思う。

しかしこっちでは何でも仕方ないで済ますし、動物の生死など頓着していない。私はここの飼い主とは顔見知り程度だが、彼らのヤギとは付き合いが長いのでむしろ私のほうが思い入れはあると思う。

以前から抜け道経由で向こうの集落や町からの犬たちがやって来るが、こっちでは犬野放しの飼い主を取り締まったり、犬を捕獲するようなシステムもないし、皆しょうがないという諦めかつ投げやりなので、基本的には自衛するしかない。

噛まれた母ヤギの飼い主にも、最近向こう側から犬の集団が来るから、もうあの辺にはつながないほうがいいですよと言っておいた。でも犬のことなので、どこでもやって来ると言えば来るだろうし、あまり有効な対策はない。知らない犬が居たらとりあえず当てるつもりで石を投げていくしかない。私はガンガン投げている。